Analyst Watch[アナリストウォッチ]
住宅アナリスト「松沢 博」氏に聞く最新の住宅事情注文住宅は全国で約28万戸が年間で建築されています。
その半数以上の約15万戸以上は土地を買って注文住宅を建築する方々です。
新たに土地を買って建物を建築するという点では、新築一戸建ての分譲住宅と変わりなく、新築一戸建て分譲住宅の年間建築戸数が12万戸くらいですから、土地を買って注文住宅を建築する人の方が実は多いのです。
土地を買って注文住宅を建築するということは、まず土地を探して、その後に自分の希望を叶えてくれる建築業者を探して、その土地に合った設計して建築することになります。そしてそれらを通じて自分の支払える金額に収めなければなりません。
その点、新築一戸建て分譲住宅は業者が広告するものをネットで選んで、自分の好みに合ったものを契約するだけで、土地・建物が同時に購入できます。場合によっては銀行と住宅ローンの交渉もしてくれます。
このようにみると新築一戸建て分譲住宅の方が、あきらかに手続きが簡単なのですから、建築戸数は圧倒的に多くても良いはずです、しかし注文住宅のほうが建築戸数が多いのです。なぜでしょうか?
それは新築住宅というのは、ただ住むだけのものではなく、家族の希望と夢にあふれた「ふるさと」だからです。単に建築効率性・コスト効率性だけを考えて建築した新築一戸建て分譲住宅では、家族の夢・希望が叶うかどうかピンとこないのです。新築住宅は建築部資材の集合体では無く、家族の住まいです。つまり新築住宅は「手段」ではなくて、「目的」なのです。
家族の夢や希望を叶えるために、どんな間取り・どんな色・機能&性能が良いのかを考えて作る必要があります。それは一人ひとり違うものとなります。ですので年間15万戸の注文住宅は全てが違う間取りになっているのです。ところが新築一戸建て分譲住宅は、同じ間取りがたくさんあります。これでは一人ひとりに沿った希望が汲み取れません。
家族のコミュニケーションを大切にしたい人は、リビングを吹き抜けにして、子供部屋はドアを付けないといった間取りにする人もいます。この場合は全館空調やZEH(ゼロエネルギーハウス)がいいでしょう。
「家族と言えばバーベキュー」という人は、バーベキュー道具は必須なので、玄関横で道具を洗えるスペースとファミリー収納を作ります。この時は、リビングはオープンワイドにして、通風を考えた間取りにする必要があります。
一人親と同居する人は、一階の和室+ベッドスペースの近くにトイレを作る人もいます。それをリビングと連結していつも家族と会話が出来るようにする人もいれば、親のプライバシーとそれぞれの家族の時間を大切にしてクローズにする人もいます。この時は遮音性の高い壁や天井の構造にする必要があるでしょう。
このように、どのような暮らしをするのかによって新築住宅の間取りや機能性能は変わります。それらを叶えるために注文住宅が良いと考えた結果が、建築戸数が多くなっている理由です。
そして「注文の多い注文住宅」をより低コストで建築することのできる業者を探す手間は惜しむべきではありません。一般的に複数訪問するのが普通で、平均7社という数字もあります。家族の夢・希望を第一に、それを予算に合わせてかなえてくれる業者がみつかるまで探すことが大切です。また決して「予算・コスト」を第一に考えてはいけません。
新築一戸建て分譲住宅の建物の平均価格は約1,400万円ぐらいです。注文住宅は約2,000万円と600万円も高いのです。それは分譲住宅が必要なものを削いでいるための価格差と言えます。その結果として分譲住宅は平均20年で売却・解体されてしまいますが、注文住宅の場合はリフォームして40年以上使われます。
となると分譲住宅は40年で2,800万円となり、注文住宅は2,000万円+リフォーム代と長い期間でみるとお得といえます。「我慢して住む」のと「夢と希望をもって住む」との差は長い期間でみるとコストとしても差が出てきます。